
二つを冒頭にお願いしたいと思います。
吉村 それでは最後に新谷さんに、海への思いということでよろしくお願いいたします。
新谷 私は小学校時代は和歌山県で、中学校以降は大阪市の南の堺市で過ごしました。その両地とも海は間近にあります。浜寺、大浜というようなきれいな海は、工場群に変わったことを非常に残念に思っております。今は塚がありまして、海運会社で働いているわけでございますが、海はかけがえのない貴重な資源を人類に与えてくれるあるいは本質的に世界に広がりをもっているとか、そういう意味では古来から文明の伝播は海を通って行われました。あるいはわれわれがいま、なりわいといたしておりますように非常に経済的な輸送手段として船を使って輸送に従事する機会を与えてくれているわけです。
それにも増して、自然は基本的に人を差別することはないという意味で非常にありがたく、好きな理由の一つです。
多少ロマン的に過ぎるかも知れませんが、自由で均等な機会を与えてくれる海を相手にする仕事、すなわち海運、水産業等に充当いたしますが、これまでも多くの若者たちの冒険心だとか独立心を養ってきました。また刺激をし、満足さしてきました。これからも若者に対する機会を与えてくれることを願ってやみません。
二十一世紀に向けた海の可能性
吉村 パネリストのみなさん一人ひとりから海への思いというお話を聞きました。続いて二十一世紀に向けた海の可能性ということを考えていきたいのですが、映像をまとめてありますので、それをご覧いただきたいと思います。
−映象−
吉村 高速化する船舶とその安全技術の現況をご覧いただいたのですが、土坂さん補足的に説明していただけませんか。
土坂 まず高速化の話ですが、日本が豊かな国になりまして、交通体系につきましては、高速化ということが非常に求められるようになりました。
航空であるとか新幹線であるとか、高速交通体系に対する期待は大変高いものがあります。海の上も同じで高速化が求められるようになったわけです。先ほど高速フェリーが出てまいりました。これは旅客船の分野の高速化です。
テクノスーパーライナーもでてきましたが、これは貨物船の分野の高速化でありまして、今技術開発が進んでいるところです。基礎研究が終わって、これから実用化に向かっていくという段階まできました。これが実用化されますと物流も変わりますし、国民生活も豊かになると思います。
もう一つ安全の技術の関係で、GMDSSが紹介されましたが、これは衛星を使った海難救助システムでありまして、地上からの電波は地球が丸い関係で、一定のところまでしかとどきません。衛星は高いところにありますので、ここを経由すると、海の上のどこにいても地上と交信ができる、これを使ってなるべく速く遭難位置を確認して救助の手配をする−これは国際的にやらなければいけませんから、各国が協力してやっていくという状況であります。
ほかにもいろんな技術開発が進んでおりまして、海が安全で利用しやすくなればなるほど、海の可能性はさらに広がっていくと期待しているところです。
吉村 船の構造面はもちろんのこと、安全に関する技術の進展というのは、海の可能性を広げてい
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